理系の本 医学

アルツハイマーを舞台とした最高の研究ドラマ!

アルツハイマー征服

  • 著者:下山 進
  • 発売日:2021-01-08

レビュー

アルツハイマーはこわい。命ではなく、人の尊厳を絶たれるこわさがある。

しかもこの病気は遺伝する(あるDNAをもっていたら発症率は100%)。

親がアルツハイマーになったら自分もなるのではないかと想像し、怯えながら生きていかないといけない。もし家系に1人でもいたら?
その恐怖から逃れることはできない。

逃れる方法は1つ。
DNA検査をし、白黒つけることだ。

私の周りでアルツハイマーとなった人はいなかったため、本書も好奇心だけで読むことできた。
自分ごとだったらこんなに楽しんで読めなかったかもしれない。

本書はプロローグが絶妙にうまい!カフェで読んでいたにもかかわらず「プロローグうまっ!!」とつい声に出してしまった。

始まりがアルツハイマーと関係のない青森のりんごの話から始まるので、カバーを外してタイトルを確認。

このときは下山さん(著者)の腕を疑った。

タイトルが合っていることを確認して、読み進めるとすぐに「プロローグうまっ!!」っと(笑)

このときは下山さん(著者)の別の本「2050年のメディア」をアマゾンでポチっていた。

導入がここまですばらしいのは初めての経験で、これだけでも本書を買ったのは正解だった。

メインテーマであるアルツハイマー治療薬の研究は「研究を題材にした昼ドラ」かと思えるほど面白い。
日本人研究者の登場も多く、エーザイの杉本さんを応援したくなった。

研究よりも研究者にフォーカスしたストーリー展開も多く非常に読みやすい。

杉本さんが権力のある人と喧嘩して左遷させられたり、戻ってきたりという個人をピックアップした話から、企業の特許侵害による裁判話などわくわくする内容が続く。

とはいっても研究の説明や歴史をおろそかにしているわけではない。

むしろ結構細かいので、メモをしながら読んだ。研究を進める上での技術ブレークスルー(電子顕微居とか、DNAの発見とか)も丁寧に押さえている。

文書はわかりやすく「お〜〜なるほど、そういうことね!」と理解しながら読むことができた。

複雑な流れがすんなり理解できたときは「下山さんよく調べたね〜」っとなぜか上から目線で感心するほどだ(笑)

クライマックスとなる治験結果のところはどんでん返しと期待感とで興奮がおさまらず、じっくり読めなかった。

下山さんはじらす演出がうまい。

さくっと結果を知りたい私にとっては、ページをめくるごとにま「まだか?」「もう〜〜」の繰り返しだ。
結末はそのまま2020年につながり、読み終わったあとは思わずエーザイの株価を確認してしまった。

本書の中にはアルツハイマーの研究者がアルツハイマーになるという衝撃的なことも書かれていた。
映画「アリスのままで」のモデルとなっているという人物の話は、アルツハイマーのこわさを思い出すには十分だった。

やはりアルツハイマーはこわい。

本書にはこわさを克服するために人類が挑んだ挑戦の軌跡が詰まっている。

人類はアルツハイマーを完全に征服できたわけではない。しかし、アルツハイマーとの戦いを知るには本書は最高の本に違いない。

研究は一人ではできない。時代を問わず様々な研究者が力を合わせながら、アルツハイマーという病魔に手探りで挑む姿が盛り込まれている。

1mmでも驚異がある人はぜひ手にとって読んでみてほしい。せめてプロローグだけでも!