理系の本 医学

壮大な薬開発の物語!ピルがすごい!

新薬の狩人たち 成功率0.1%の探求

  • 著者:ドナルド R キルシュ、オギ オーガス
  • 訳者:寺町 朋子
  • 発売日:2018-06-15

感想

「薬を作る」このことがどれだけ難しく、そしてどれだけ魅力的なことか教えてくれる一冊でした。著者と訳者がどちらも薬の開発経験者ということもあり、全てにおいて最高の本でした。

新薬の開発費は平均で15億ドル、FDA(アメリカ食品医薬品局)の承認を得るまで1品あたり14年と言われていて、新薬を作ることなく生涯をおえていく開発者もざらなんだとか。

理由は「身体の複雑さ」で、結局人体で試して見ないと有効かどうかわからないことが原因。
これは今も変わらない事実で、薬を販売するまでには厳密な臨床試験をクリアしなければならない。

ちなみに宇宙の中で薬になるかもしれない化合物は3×10の62乗(笑)あたりをつけて試していくにしても気の遠くなる数がある。

これに挑戦しているのがドラックハンター(新薬の狩人)で、本書の主人公!

本書はドラックハンターが薬を開発する経緯を過去から未来へ、逸話や雑談も含めて興味深く教えてくれています。

一番簡単な方法は「植物」を食べてみること(笑)その中でも有名なのがケシの実から取れるアヘンで、そこからモルヒネ、ヘロインといったものへ派生が時系列にかかれている。

まとめると

1826年に、アヘンからモルヒネが単離される。
モルヒネの依存性が問題となっていたので、それをクリアするためにヘロインが開発された。
ヘロインは麻薬としてではなく「病気を治す英雄」的にな存在として期待されて開発されて、当初咳止めとして販売されていた。しかも、ヘロインキットとして大々的に販売!

しかし、ヘロインは体内で分解されて、その中にモルヒネ成分が含まれていることがわかる。
最終的にヘロイン開発企業はメディアにボロクソに言われるという結末が待っていた(笑)

という具合の内容がテンポよく書かれていて、しかも密度が濃い!

このような話が1章20ページ程度でまとめられていて12章ある。

どこから初めても面白いけど、「アスピリン」と「ピル」の話は傑作!

アスピリンは染料技術をきっかけとした合成化学で薬を作るという新しい時代の幕開けの話。
ピルは女性の社会的問題にスポットを当て、時代を超えた複数の研究者、運動家、資産家など偶然と幸運がもたらした奇跡の話が綴られています。

ピルの物語はなんと牛を妊娠させる研究から始まる。避妊薬の開発物語なのに、妊娠させることを目的とした行為から始まる時点でわくわくする!

牛に乳を出してもらうためには妊娠させないといけないが、たまになる不妊になってしまうという問題が起こっていた。色々試すうちに卵巣にある壊れやすい構造物を壊すと何故か妊娠できるようになることを獣医が発見し、科学雑誌で発表。これがピル物語のスタートポイント。

そこからホルモンの特定が始まり研究スタートと思いきや、従来の方法ではとれる量が少ないという大問題が。安くて大量に作る方法がないと研究を進められない。

そんなときにヒーローが登場!
工業的に大量にホルモンを作ることが可能に!

研究が世界中でホルモンの活性化する中、一人の研究者に焦点がいく。

うさぎ(哺乳類)の体外受精を成功させたことで世間から嫌われちゃった研究者はひょんなことから女性の妊娠を問題視した看護師と出会う。

看護師は経口避妊薬を追い求めていたが、それを作ってくれる企業が見つからずに四苦八苦していた。
研究者は「金があったらぜきるぜ!」と看護師にいうが、そんな看護師はそんなお金を持っていない。

そんなときにでてきたのが看護師の親友。
「女性のためなら、お金出しますよ!」と潤沢な資金が手に入る。

わ〜〜いと思ったのもつかの間、次は臨床医がいない。

そこで出てきたのが研究者の同級生のおじいちゃん医師!
その役目私にまかせてください!と、臨床医決定!

しかし、人工避妊が違法なので臨床できるところがない。
なら法の及ばないところ探そうぜ!ととある島で臨床を開始。

そして、臨床も成功!

よっしゃ〜!ばんざ〜〜い!かんぱ〜〜い!
と思いきや薬を作ってくれる製薬会社がない。。。

いやいや、そこまでやったら弊社でやるよ!と一旦断られた企業が急遽参加!
そして、ようやくピルが誕生しましたとさ!

本書ではより細かく様々な逸話や時代背景が書かれているので、このピルの話だけでも読む価値は十分にあります!

ピル以外にも、インスリン、サルバルサンからのペニシリンの開発の流れ、降圧薬、キニーネ、壊血病などの話やFDAができた時代背景など好奇心をくすぐる話がふんだんにあります。

何が面白いかって、薬の開発物語なのに人間の表現がうまいんです!

インスリンの開発では開発者の嫉妬が。
アスピリンはで特許とれないから名前を呼びやすくして売っちゃおうという計画が。
ラパマイシンでは上司認めてくれないなら自宅で菌保存しちゃおうという研究への情熱が。

それぞれの薬にその人柄が出ててきてたまらない!

面白い本をお探しでしたら、これを買っておけば間違いありません!